青色申告と白色申告のメリット・デメリットを比較|個人事業主はどちらがおすすめ?
個人事業主として確定申告をする際、「青色申告と白色申告のどちらを選べばよいのか」と迷う方は少なくありません。
青色申告は、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除や純損失の繰越しなどの特典を受けられる一方、事前の申請や帳簿の作成が必要です。
白色申告は青色申告の承認申請が不要で、比較的簡易な方法で記帳できますが、青色申告特有の税務上の特典は受けられません。
この記事では、青色申告と白色申告の違い、それぞれのメリット・デメリット、個人事業主がどちらを選ぶべきかを、税理士事務所の視点から分かりやすく解説します。
※本記事は2026年8月時点の法令・公表情報をもとに作成しています。個別の事情によって税務上の取扱いが異なる場合があります。
青色申告と白色申告の違いを比較
まずは、青色申告と白色申告の主な違いを確認しましょう。
| 比較項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前申請 | 原則必要 | 不要 |
| 記帳 | 控除額に応じて複式簿記等が必要 | 簡易な方法による記帳が可能 |
| 青色申告特別控除 | 2026年分は最高65万円 | なし |
| 純損失の繰越し | 一定の要件で翌年以後3年間可能 | 青色申告の純損失繰越制度は利用不可 |
| 家族への給与等 | 一定要件で青色事業専従者給与を必要経費に算入可能 | 一定要件で事業専従者控除あり |
| 少額減価償却資産の特例 | 一定要件で利用可能 | 利用不可 |
| 事務負担 | 控除を大きくするほど増えやすい | 比較的少ない |
大きな違いは、青色申告では一定水準の記帳や申告を条件に、税務上の特典を受けられる点です。
一方、白色申告でも記帳や帳簿・書類の保存が必要です。「白色申告なら帳簿を付けなくてよい」というわけではありません。
国税庁では、事業所得、不動産所得または山林所得を生ずべき業務を行う白色申告者にも記帳・帳簿等の保存が必要であると案内しており、簡易な方法による記帳も認められています。国税庁
青色申告とは?
青色申告とは、一定の帳簿を備えて日々の取引を記録し、その帳簿に基づいて正しく申告する方に対して、所得税上のさまざまな特典が認められる制度です。
青色申告を選択できるのは、不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う方です。
青色申告を始めるには、原則として青色申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合には、原則として事業開始日から2か月以内が提出期限です。
青色申告を検討している場合は、確定申告の時期になってから考えるのではなく、申請期限をあらかじめ確認しておくことが大切です。国税庁
白色申告とは?
一般に、事業所得などがあり、青色申告の承認を受けていない方が行う申告を白色申告と呼びます。
青色申告のような事前の承認申請は必要ありません。
ただし、白色申告者にも記帳義務があります。売上などの収入金額や仕入れ・経費について帳簿に記録し、帳簿や請求書、領収書などを一定期間保存する必要があります。
白色申告では、日々の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法による記帳が認められています。
したがって、白色申告は「帳簿を付けなくてもよい申告」ではなく、「青色申告と比較すると簡易な方法による記帳が認められている申告」と考えると分かりやすいでしょう。
青色申告のメリット
1.青色申告特別控除を受けられる
青色申告の代表的なメリットが「青色申告特別控除」です。
2026年分については、要件に応じて65万円、55万円または10万円を所得金額から控除できます。
55万円の青色申告特別控除を受けるには、事業所得または事業的規模の不動産所得について、原則として複式簿記により記帳し、貸借対照表や損益計算書等を添付して期限内に申告するなどの要件があります。
65万円の控除を受けるには、55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる申告または一定の要件を満たす電子帳簿保存が必要です。
そのため、青色申告を選択しただけで自動的に65万円の控除を受けられるわけではありません。
なお、2027年分以後は青色申告特別控除の制度が改正されます。65万円控除の要件に加え、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たした場合には、最高75万円の青色申告特別控除を受けられる制度となります。
申告する年分によって適用要件が異なるため、最新の制度を確認することが大切です。国税庁
2.赤字を翌年以後に繰り越せる
青色申告では、事業所得などに赤字が生じ、損益通算をしても控除しきれない純損失が残った場合、一定の要件のもとで翌年以後3年間にわたって繰り越し、将来の所得から控除できます。
たとえば、開業初年度に設備投資や広告宣伝などの支出が先行して赤字となり、翌年以降に利益が出た場合、一定の要件を満たせば過去の純損失を翌年以後の所得から控除できます。
開業当初や事業拡大期には支出が先行することもあるため、事業を継続する個人事業主にとって重要なメリットの一つです。
なお、前年も青色申告をしている場合には、一定の要件のもとで純損失を前年に繰り戻し、前年分の所得税の還付を受けられる制度もあります。国税庁
3.家族に支払う給与を必要経費にできる場合がある
青色申告者と生計を一にする配偶者や15歳以上の親族が事業に専ら従事している場合、一定の要件を満たせば「青色事業専従者給与」として、実際に支払った給与のうち適正な金額を必要経費に算入できます。
ただし、家族に支払った給与であれば無条件に必要経費になるわけではありません。
原則として「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があり、支給する給与も仕事内容や従事状況などから見て適正な金額であることが求められます。
また、青色事業専従者として給与の支払いを受ける方は、その事業主の同一生計配偶者や扶養親族にはなれない点にも注意が必要です。
4.少額減価償却資産の特例を利用できる場合がある
一定の要件を満たす青色申告者である個人事業主は、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」を利用できる場合があります。
2026年度税制改正により、対象となる取得価額の上限は30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。
一定の要件を満たせば、40万円未満の減価償却資産について、年間合計300万円を限度として取得した年に必要経費へ算入することができます。
パソコンや事業用機器などを購入する場合に利用できる可能性がありますが、対象となる事業者や資産には要件があるため、適用する際には確認が必要です。中小企業庁
青色申告のデメリット
1.事前に承認申請が必要
青色申告を利用するには、「所得税の青色申告承認申請書」を期限までに提出する必要があります。
確定申告の時期になってから青色申告に変更したいと考えても、申請期限を過ぎていれば、原則としてその年分から青色申告を適用することはできません。
青色申告への変更を検討している場合には、早めに申請期限を確認しておきましょう。
2.白色申告より記帳の負担が増える場合がある
青色申告でも簡易な記帳による方法はありますが、2026年分について55万円または65万円の青色申告特別控除を受けるには、原則として複式簿記による記帳が必要です。
複式簿記に慣れていない方の場合、仕訳や帳簿の作成を難しく感じることもあります。
一方、現在では銀行口座やクレジットカードと連携できる会計ソフトも多く、取引入力や帳簿作成の負担を軽減できるようになっています。
継続して事業を行う場合には、会計ソフトの利用も含めて記帳体制を整えるとよいでしょう。
3.特典ごとに適用要件がある
青色申告特別控除、青色事業専従者給与、純損失の繰越し、少額減価償却資産の特例などには、それぞれ適用要件があります。
「青色申告者であればすべての特典を自動的に受けられる」という制度ではありません。
利用したい制度がある場合には、それぞれの要件や必要な手続きを事前に確認することが大切です。
白色申告のメリット
1.事前の承認申請が不要
白色申告では、青色申告承認申請書の提出を必要としません。
青色申告の申請期限を過ぎてしまった場合などには、その年は白色申告を行い、翌年分から青色申告へ切り替える方法もあります。
2.比較的簡易な方法で記帳できる
白色申告でも帳簿の作成は必要ですが、日々の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法による記帳が認められています。
取引件数が少なく、複雑な経理処理が少ない場合には、青色申告で複式簿記を行う場合と比べて記帳の負担を抑えやすい点がメリットです。
白色申告のデメリット
1.青色申告特別控除を受けられない
白色申告では、青色申告特別控除を利用できません。
青色申告で所定の要件を満たせる個人事業主にとっては、この違いが所得金額や税額に影響する可能性があります。
2.青色申告の純損失の繰越制度を利用できない
白色申告では、青色申告者に認められている純損失を翌年以後3年間繰り越す制度を利用できません。
ただし、災害による一定の損失などには別の取扱いがあるため、「白色申告ではどのような損失も一切繰り越せない」という意味ではありません。
3.家族への給与の取扱いが青色申告と異なる
白色申告では、生計を一にする家族へ支払った給与を青色事業専従者給与と同じ方法で必要経費に算入することはできません。
ただし、白色申告にも「事業専従者控除」があります。
一定の要件を満たす場合には、配偶者は最高86万円、その他の親族は1人につき最高50万円を基準として計算した一定額を必要経費とみなすことができます。
実際の控除額は、これらの金額と「事業専従者控除をする前の事業所得等の金額を、専従者の人数に1を加えた数で割った金額」のいずれか低い金額です。
したがって、「白色申告では家族に関する経費を一切計上できない」という説明は正確ではありません。
青色申告の青色事業専従者給与と、白色申告の事業専従者控除は仕組みが異なる制度として理解しておきましょう。国税庁
青色申告と白色申告では税金がどれくらい違う?
青色申告と白色申告による税額の差は、所得金額、所得控除、家族構成、他の所得の有無などによって変わるため、一律に「青色申告なら○万円得になる」とは言えません。
ただし、青色申告特別控除による所得金額の違いを比較することはできます。
たとえば2026年分で、青色申告特別控除を差し引く前の事業所得が300万円だった場合は、次のようになります。
| 申告方法 | 青色申告特別控除 | 控除後の事業所得 |
|---|---|---|
| 白色申告 | なし | 300万円 |
| 青色申告 | 10万円 | 290万円 |
| 青色申告 | 55万円 | 245万円 |
| 青色申告 | 65万円 | 235万円 |
青色申告特別控除は、税額から直接65万円を差し引く「税額控除」ではありません。事業所得等の金額の計算上、一定額を控除する制度です。
そのため、65万円の青色申告特別控除を受けたからといって、所得税が65万円安くなるわけではありません。
実際の税額は、所得税率や各種所得控除などによって異なります。また、純損失の繰越しや青色事業専従者給与などが影響する場合もあるため、青色申告と白色申告の有利・不利は青色申告特別控除だけで判断するものではありません。
個人事業主は青色申告と白色申告のどちらを選ぶべき?
今後も継続して事業を行う予定があり、必要な記帳や手続きに対応できる個人事業主であれば、青色申告を検討するメリットは大きいと考えられます。
特に、青色申告特別控除を利用したい方、開業時などの赤字を将来に繰り越したい方、家族が事業に専従している方、事業用の設備を購入する予定がある方などは、青色申告による特典を利用できる可能性があります。
一方、青色申告の申請期限を過ぎている場合や、取引件数がごく少なく、当面は簡易な方法で申告したい場合には、白色申告となるケースもあります。
重要なのは、「売上が少ないから白色申告」「青色申告なら必ず得」と一律に判断するのではなく、所得の状況、今後の事業計画、記帳の負担、利用できる制度などを総合的に考えることです。
個人事業主として継続的に事業を行う予定がある場合には、青色申告と白色申告のメリット・デメリットを比較したうえで、ご自身に適した方法を選択しましょう。
白色申告から青色申告へ変更する方法
白色申告から青色申告へ変更する場合は、原則として青色申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合には、原則として事業開始日から2か月以内です。
青色申告特別控除を利用する予定であれば、申請書を提出するだけでなく、希望する控除額に応じた記帳や申告ができる体制も整えておく必要があります。
青色申告への変更を予定している場合には、申告時期を迎えてから準備するのではなく、早めに帳簿や会計ソフトなどの環境を整えておくことをおすすめします。
青色申告・白色申告についてよくある質問
売上がいくらになったら青色申告にすべきですか?
「売上が○万円を超えたら青色申告にしなければならない」という基準はありません。
青色申告を選択するかどうかは、売上だけではなく、所得金額、今後の事業継続、赤字が生じる可能性、家族の事業への従事状況、設備投資なども含めて判断します。
売上がそれほど大きくなくても、今後継続して事業を行うのであれば、青色申告を検討する価値があります。
白色申告なら帳簿を付けなくてもよいですか?
いいえ。
事業所得、不動産所得または山林所得を生ずべき業務を行う白色申告者にも、記帳と帳簿・書類の保存が必要です。
白色申告では簡易な方法による記帳が認められていますが、記帳そのものが不要になるわけではありません。国税庁
副業でも青色申告できますか?
副業であるという理由だけで青色申告ができないわけではありません。
ただし、青色申告をすることができるのは、不動産所得、事業所得または山林所得のある方です。
副業による所得が税務上「雑所得」に該当する場合には、その雑所得について青色申告制度を利用することはできません。
副業による所得が事業所得に該当するかどうかは、単に本人が事業と考えているかどうかだけでなく、業務の実態などを踏まえて判断する必要があります。
青色申告に会計ソフトは必要ですか?
会計ソフトの利用は青色申告の必須条件ではありません。
必要な帳簿を適切に作成できれば、会計ソフトを使わずに青色申告を行うことも可能です。
ただし、複式簿記による記帳や貸借対照表の作成が必要になる場合、取引件数が増えるほど手作業による管理の負担も大きくなります。
銀行口座やクレジットカードと連携できる会計ソフトを活用することで、日々の記帳を効率化できる場合があります。
まとめ|青色申告と白色申告のメリット・デメリットを比較して選びましょう
青色申告は、一定の手続きや記帳が必要になる一方で、青色申告特別控除、純損失の繰越し、青色事業専従者給与、少額減価償却資産の特例など、個人事業主にとって有用な制度を利用できる可能性があります。
白色申告は青色申告のような事前承認が不要で、比較的簡易な方法で記帳できますが、青色申告特有の税務上の特典は利用できません。
継続的に事業を行う個人事業主であれば、まず青色申告のメリットと必要な手続きを確認し、ご自身の事業に適しているか検討するとよいでしょう。
ただし、青色申告と白色申告のどちらが有利かは、事業内容や所得、家族の状況、今後の事業計画などによって異なります。
髙垣会計税理士事務所では、個人事業主の確定申告をはじめ、青色申告への変更や日々の記帳、税務に関するご相談を承っております。
ご自身のケースで青色申告と白色申告のどちらが適しているか判断に迷われる場合は、お気軽にご相談ください。
